原作なしのオリジナルアニメ映画。よくも悪くも当たり外れが激しく、刺さる人には刺さる名作が多いのが特徴です。
国産のオリジナルアニメ映画と言うとスタジオジブリ作品(宮崎駿作品)の1強状態でしたが、昨今だと新海誠監督や細田守監督など非スタジオジブリの人気作品も増加。以前よりも多様性に富んできました。
この記事では、2000年以降に発表されたオリジナルアニメ映画の中からおすすめ作品をピックアップ。原作なし。シリーズものなし。映画単体で楽しめる作品を紹介します。
2020年代のオリジナルアニメ映画
君たちはどう生きるか(2023年)
※ジブリ作品はVOD配信なし
御年80歳を超える宮崎駿監督10年ぶり新作。同作にて『千と千尋の神隠し』以来2度目となる米アカデミー賞を受賞した。
1930年代の日本が舞台。母親を亡くした少年が異世界で冒険・成長する王道のジブリ作品。「気持ち悪い」と形容される宮崎駿の思想面を従来のジブリ作品よりもたっぷり盛り込み。子ども向けよりかは大人向けの考察系の作品に。
駒田蒸留所へようこそ(2023年)
『花咲くいろは』『SHIROBAKO』で知られるP.A.WORKSが手がけるお仕事アニメの正統後継作。
経営難のウィスキー蒸留所を立て直すべく奮闘する女社長の物語。富山県にある若鶴酒造をモデルにした(P.A.WORKSも富山県に本社)。
主演に早見沙織。監督は『有頂天家族』の吉原正行。作品はDMM TVにて独占配信。他のVODだと配信なし。
アリスとテレスのまぼろし工場(2023年)
MAPPAが手がけるNetflixオリジナルアニメとして展開された同作。
時間が止まった街を舞台にしたSFヒューマンドラマ。製鉄所の爆発事故により時空の歪みに閉じ込められた人々が、もとの世界に戻るべく現実世界との整合性を保つよう、変化せぬように生き続ける思考実験的な哲学作品に。
監督・脚本は岡田麿里(代表作:あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)が担当した。
すずめの戸締まり(2022年)
新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』。世界興行収入は400億円超と新海誠作品の中では過去最高ヒット。
災い(災害)をもたらす異次元の扉を閉めるべく日本各地を旅するロードームービー。災いの裏にある人々の想いをたどり、「生きるとは」を問うていく作品に。東日本大震災をテーマにした作品でもある。
主演に原菜乃華と松村北斗。主題歌はRADWIMPSが『君の名は。』『天気の子』に引き続き担当した。
竜とそばかすの姫(2022年)
細田守監督の作品の中では最高ヒット。興行収入66億円を突破した『竜とそばかすの姫』。
アバター社会(いわゆるメタバース)で歌姫として活躍する女子高生を主人公に描いたSFヒューマンドラマ。幼少期のトラウマがきっかけで人とうまくコミュニケーションが取れなくなった少女の成長を追った。
"メタバース”が流行っていた2022年当時の仮想社会論だったり、SNS炎上のエッセンスを取り入れ。『サマーウォーズ』(2009年)の時代とはまた違ったインターネット社会を描いた作品に。
バブル(2022年)
Netflixオリジナルアニメとして制作された『バブル』。WIT STUDIOが制作した。
重力異常により海抜沈没した東京が舞台。重力異常をもたらす謎の泡(バブル)の正体めぐる謎解きSFアクション。
監督は荒木哲郎(代表作:進撃の巨人)、脚本は虚淵玄(代表作:魔法少女まどか☆マギカ)、キャラデザは小畑健(代表作:DEATH NOTE)とオールスター揃った同作。アニメーション演出など非常に豪華で見応えあり。
アイの歌声を聴かせて(2021年)
土屋太鳳が主演した青春SF映画。監督は『イブの時間』で知られる吉浦康裕。
AIの実地試験として高校に送り込まれた少女型AIロボの学園生活を追った。
AIの暴走っぷりを情緒不安定なティーンエージャーの行動とかけ合わせて描写。破天荒あるいは意外にも空気を読んで行動している若者の行動を「AI」かつ「ティーンエイジャー」の両側面から展開した。AIも女子高生もそこまで変わらないのでは?と考えさせられる異色のAI作品に。
2010年代のオリジナルアニメ映画
天気の子(2019年)
新海誠監督の過去作品『天気の子』。日本国内の興行収入は142億円を突破。『君の名は。』に続き2作連続で興行収入100億円を突破した(宮崎駿以来2人目の快挙)。
天候を操る力を持つ”晴れ女”ヒロインめぐるSFヒューマンドラマ。異常気象が続く夏の東京で晴れ女ビジネスを展開するも、徐々にコントロールが効かなくなっていく。古今東西と続く「自然vs人間」の対立構図あるいは共生構図を作品に落とし込んだ。
空の青さを知る人よ(2019年)
あいみょんの同名主題歌で知られる『空の青さを知る人よ』。
30代の青春を描いたヒューマンドラマ。高校時代の生霊が現れたことで再度の青春が始まる。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』チームが再集結。脚本を岡田麿里が担当。制作は超平和バスターズ。作中舞台は埼玉県秩父市。
さよならの朝に約束の花をかざろう(2018年)
脚本家の岡田麿里が初監督した『さよならの朝に約束の花をかざろう』。P.A.WORKSが制作した。
数百年の時間を生きる不老長寿の少女と、成長し続ける少年との関係性の変化を追ったヒューマン・ファンタジードラマ。人間ならではの有限の一生を通じて「生きるとは」を問うてゆく作品に。
夜明けを告げるルーのうた(2017年)
仏アヌシー国際映画祭で最高賞を受賞した湯浅政明監督の代表作。湯浅政明監督は『クレヨンしんちゃん』の作画監督として知られる。
両親の離婚で心を閉ざした少年と、謎の人魚の交流を描いたヒューマンドラマ。人魚に導かれるように再び人生を歩みだす少年の成長を追った。
重たそうなテーマ一方、ポップな絵柄とノリのいい展開で気軽に視聴できる。
打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(2017年)
岩井俊二監督が手がけた同名テレビドラマを原案にSHAFTがオリジナルアニメ化。『物語シリーズ』で知られる新房昭之監督が監督。広瀬すずが主演した。
少年・少女のひと夏の恋を描いた青春ドラマ。親から逃げたくて駆け落ちしようとする少女の人生ifをSF調で展開した。
本家テレビドラマは恋愛ifストーリーを並列的にドラマ化。アニメ映画版もそれに近いSFチックな仕上がりだが、それゆえ初見だと理解しずらいストーリーかもしれない(できれば2回観るのがおすすめ)。
君の名は。(2016年)
日本国内の興行収入が250億円を突破。新海誠監督の代表作『君の名は。』。
東京に住む少年、田舎に住む少女の入れ替わりミステリー。往年のオタク・コンテンツたる"セカイ系”に準じた作品ながら異例の大ヒットを記録。アニメブームの大衆化が言われるきっかけに。
心が叫びたがってるんだ。(2015年)
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の制作スタッフが再集結したヒューマンドラマ。
トラウマで他人と喋れなくなった女子高生が主人公。おしゃべりな性格ゆえに家族の不和を招き、以降、人とまともに会話できなくなった少女の再起を追った。
岡田麿里氏が脚本。埼玉県秩父市を舞台にした。主題歌は乃木坂46の「今、話したい誰かがいる」。
バケモノの子(2015年)
細田守監督の過去作品。興行収入は細田守作品で当時最高となる58億円を記録した。
実の父親に捨てられ、熊のバケモノの育てられた人間の少年が、家族愛の正体を探していくファンタジードラマ。
細田守作品は家族愛をテーマにした作品が多いが、今作は父子関係をテーマにした。子を捨てるバケモノ、気味がられる見てからのバケモノ、双方を重ねて描写した。
楽園追放 -Expelled from Paradise-(2014年)
水島精二&虚淵玄がタッグ組んだオリジナルSFアニメ『楽園追放』。
人類の9割が肉体を捨て、脳を電脳化して生きながらえる25世紀の地球が舞台。電脳世界へのハッキング攻撃を捜査すべく、現実世界へと降り立った捜査官が、生身の身体で生き続ける人間たちの世界を旅する。
SFあり、バトルあり、哲学ありの全部盛り作品としてアニオタ界隈で特に人気に。ミニシアター興行ながら興行収入は1.8億円を突破した。公開10年目の節目となる2024年、まさかの続編制作が決定した。
風立ちぬ(2013年)
※ジブリ作品はVOD配信なし
宮崎駿監督の引退作だったもの(のちに引退撤回)。
ゼロ戦の開発者、堀越二郎の生涯を追った伝記的作品。
根っからの技術屋青年が、戦争の時代の中でゼロ戦の開発者に。戦争兵器として飛行機が活躍しては名を上げていく葛藤を追った。
言の葉の庭(2013年)
新海誠監督の過去作品。45分のショートアニメとして展開された。
雨が降る新宿を舞台にしたヒューマンドラマ。人生に挫折した大人、未来に目を輝かせる高校生の交流を描いた。
『君の名は。』以前の新海誠作品ならではの静かな雰囲気が特徴的。雨の音ばかり鳴る尖った作品に。新宿御苑はじめ新海誠監督のホームグラウンドたる新宿の名所が数多く登場しており、その映像美も含めて楽しめる。
おおかみこどもの雨と雪(2012年)
『サマーウォーズ』に続く細田守監督の長編作品第2作。
母子愛をテーマにしたヒューマンドラマ。おおかみと人間の間に産まれた2人の子どもの成長、同時にシングルマザーの子離れをファンタジーチックに描いた。細田守監督いわく、どちらかと言うと母親が主人公の作品に。
2000年代のオリジナルアニメ映画
サマーウォーズ(2009年)
細田守監督の初の長編作品。昔ながらの大家族がサイバーテロと戦うSFヒューマンドラマ。
時代設定は2010年の日本。ハッカーに乗っ取られた仮想世界サービスを取り戻すべく、数学が得意な男子高校生がハッカーと知恵比べする。
細田守監督が2000年に手がけた『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』を土台にした作品としても知られる。
秒速5センチメートル(2007年)
新海誠監督の名前をアニメファンに知らしめた往年の名作。
小学校のクラスメイトだった男女のすれ違う人生を追った切ないラブストーリー。
中学時代、高校時代、社会人と時間が流れ、抗うも抗うも全く関わりのない他人に別れていく。これもう本当に切なくて冬場に1人で見ると凍死しそうな勢い。のちに発表されたコミカライズ版ではアニメで描かれなかった真のラストも展開された。アニメを見ちゃったらコミカライズ版も見ておきたい(→ Amazonページ)。
千と千尋の神隠し(2001年)
※ジブリ作品はVOD配信なし
もはや古典的名作。宮崎駿監督の代表作『千と千尋の神隠し』。
八百万の神が住む異世界で成長していく少女の物語。
2002年に日本映画で初めて米アカデミー賞を受賞。名実ともに日本を代表するアニメ作品に。